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CLASS-Sなモノ・コト

VOL.
11
   「TAICHIRO MORINAGA」 チョコレート 2017.February

「TAICHIRO MORINAGA」 チョコレート

CLASS-Sな逸品
「TAICHIRO MORINAGA」 チョコレート

担当編集者であるO氏が言う。「今回のテーマはチョコレートでいかがですか?」。折しもバレンタインデーである。チョコレートの消費量がぐんと跳ね上がる季節である。海外のブランドもこの時期に併せて日本で新商品を発表するようになっているとも聞く。

その背景にはもちろん、我が国独自に発達したイベントがあってこそ。スタイルは多様化しているようだが、2月14日は相変わらず、たくさんの少女が女性としての優位性に目覚め、たくさんの少年が淡い期待を踏みにじられることだろう…。

そんな熱狂(?)が自分の周囲にあったかどうかさえ、とうに忘れてしまったがO氏の提案には「いいですね」と僕。それは単純に食品として捉えてみたいとかねてから思っていたからである。

カカオ豆の生産の歴史(負の部分も含む)、栄養価(過食すると毒にもなりかねないという点にも惹かれる)、製造方法、素材など、様々な角度から見つめることができる。この時期であれば面白そうな商品が揃いやすいだろう。とはいえ、無論、ここはそれを語る場所ではないと思っていた。

ところが、それからややあって、森永製菓から新たなチョコレートブランドが誕生していたと知る。それが「TAICHIRO MORINAGA」。同社の創業者である森永太一郎の名をそのまま冠したものだ。

「TAICHIRO MORINAGA」 チョコレート

老舗が取り組む、老舗だからこそできる新たな試みである。それはまさにCLASS-Sと共通するスタンスではないか。

森永太一郎は1899年、アメリカでの西洋菓子づくりの修行を終えて帰国し、キャラメルやマシュマロの製造を開始したという。当時の日本人に与えたインパクトは計り知れず、その驚きを時を経て今一度味わっていただこう、というのがコンセプトらしい。

ラインアップは1964年発売の超スタンダードを現代風にアップデートした「Hi-CROWN」、エアリーなチョコの外側を焼き上げた「Aeration Chocolate」、独自のベイクド技術を駆使し、香や味を複雑に調和させた「ABURI」、チョコレートパウダー「Refined Chocolate」、カカオ豆のロースト「NIBS & NIBS Chocolate」である。

「TAICHIRO MORINAGA」 チョコレート

特に「ABURI」は、醤油を加えたチョコでコーティングされた"キャラメル"、純米大吟醸の酒粕と本みりんで仕上げた"酒粕"、甘さ控えめの餡とほうじ茶の芳香が漂う"餡"、本みりんや醤油、ヘーゼルナッツが調和した"ジャンドゥーヤ"という、4種いずれもが和の食材を要としていることに魅了された。

さらに、このシリーズが目指す「驚き」という観点でいえば、"酒粕"が最右翼ではなかろうか。酒粕の湿り気を含んだ香りが喉の奥や鼻腔に漂い、どこかふんわりとした暖かささえも連れてくる。そして、チョコレートという個体が消え去っても、しばらくその残り香を楽しむことができた。

味覚と嗅覚が心地良くくすぐられる、贅沢なひとときである。それは、チョコレートに限らず、食べるという行為から誰もが受け取ることのできる悦びといえよう。

では、果たして聴覚はどうか。音楽家たちの心の機微、演奏の陰翳が、余すことなく耳に到達しているか。音楽のエッセンスを本当に味わえているか。そんな探究心が芽生えたら、CLASS-Sを手に取ってみるのがよいだろう。きっと、何らかの気づきを与えてくれるだろうし、さらにはもし意中の人物が音楽ファンならチョコレートにプラスして、なんて少し気が利き過ぎた振る舞いだろうか。

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