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CLASS-Sなモノ・コト

VOL.
19
   前原光榮商店「洋傘」 2017.October

今回から中林氏より引継ぎ、本コラムを担当させていただくことになりました折原です。JVCの“CLASS-S”がコンセプトとする上質さは、我々の生活を彩るすべての“モノやコト”にも通ずる考え方だと日頃から感じていた次第。
そんな上質なモノ・コトを幅広く紹介していければと思っています。ぜひこれからもご期待下さい。

前原光榮商店「洋傘」

CLASS-Sな逸品
前原光榮商店「洋傘」

雨傘-これから迎える秋の長雨。雨の多い風土に生きる日本人にとって古くから親しみのある日用品だ。そんな身近な傘にもCLASS-Sなモノが存在する。昭和23年に東京・台東区三筋に開業した「老舗・前原光榮商店」の洋傘を紹介したい。

先日、そのショールームを訪れてみた。美しい色とりどりの傘が陳列され、手に取ってみると、その一点一点が職人の手作りの世界であることを思い知らされる。

洋傘作りは、生地を織り、骨を組み、生地と骨を合わせて組み上げ、そして持ち手となる『手元』をつくるという4っの工程に大きく分けられる。

生地は甲斐織物の産地であった山梨県の伝統的な機(はた)で織られ、4っの工程はそれぞれ、別々に専任の職人の手によって行われる。異なる専門の職人芸の組み合わせで作り上げられるのが「前原光榮商店」の洋傘の特長なのだ。

たとえば骨は傘の天辺からカーブし張り出すため、骨と骨の間は単純な二等辺三角形にはならない。そのため、生地もその曲面に合わせて加工する必要がでてくるわけだ。また、一般的に洋傘は8本骨が多いが、「前原光榮商店」では強度を高めるために10本骨、12本骨、16本骨のものもラインアップしている。この骨の数が増えるほど生地にも高精度な加工が求められるそうだ。

前原光榮商店「洋傘」

とても興味深いのが『手元』だ。木材を熱して曲げ、型にはめておくという手法で加工され、スタンダードな楓をはじめとするとした様々な木材を好みによって選ぶことができる。この曲げ加工にも熟練の技が生きている。選ぶ木材によってキャラクターが変わってくる。このあたりもオーディオ機器に通じるようでなんだか面白い。

前原光榮商店「洋傘」

さて、どんな傘を選ぼうか。わくわくしていると、創業3代目前社長が「究極的に言ってしまえば、雨をしのぐという目的さえ果たせればどれでも気に入ったものを選んでかまいません。大事なことは、どんな傘があるのかを知っておいた上で選ぶことです。」と教えてくれた。つまり上質さや本質を知っておくことで選択の幅が大きく広がるということだ。

前原光榮商店「洋傘」

傘を彩る生地は色、柄もさまざま。臙脂色に惹かれて選んだ一本の傘の生地は緯糸と経糸に対色が用いられ、安価な傘にはない非常に美しい光沢感を生み出していた。

傘を構成するすべての部品にも技術があり、各々素材にも選ばれた理由がある。本質を追求し、工程や素材にこだわる。これはまさにCLASS-Sにも通じる世界だ。
秋の長雨も楽しめそうだ。

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