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CLASS-Sなモノ・コト

VOL.
06
   三陽山長 「友二郎(ともじろう)」 2016.September

三陽山長「友二郎(ともじろう)」

CLASS-Sな逸品
「三陽山長」の友二郎(ともじろう)

「くん」でも「さん」でもない。付けるならば「氏」こそが相応しい。

友二郎、友之介、友太郎、弥三郎、燕之介、長六郎…。これらは三陽山長が展開するドレスシューズの名称である。そして、彼らの佇まいを少し眺めるだけで、冒頭の意味がおわかりいただけると思う。手にするだけで気が引き締まるかのような存在感。さらに、高級紳士靴という、とてつもなく奥深い世界にじわりと誘われているような気さえしてくる。

三陽山長が産声を上げたのは2001年のこと。靴づくりの世界ではラストと呼ばれる木型がシューズのフォルムを決定付け、無論、履き心地にも大きく影響を与える。今回紹介する友二郎(やはり、氏と付けたくなってしまう…)は、2001年に完成させた木型「R201」を元に約10年の歳月をかけてブラッシュアップした「R2010」で製作されている。

三陽山長「友二郎(ともじろう)」02

また、この「R2010」をベースにした他の木型「R2013」も開発。そして、驚くべきことに、製品の個性的なネーミングは、このような木型のバリエーション及び、チップやストラップの種類などで決定されている。たとえば、「友」はストレートチップを、「郎」はR201系の木型を使用したもの、というふうに。

友二郎は同社の定番中の定番であり、多くのファンを持つ。洋服のテイストが変わろうとも、コーディネートさせやすい。ただ、スタンダードだからといって、面白みがないわけではない。丁寧に施されたスワンネックの飾りステッチ、土踏まず部分の立体的な絞り込みなどに、造形物としての美しさを感じさせる。そして僕が最も感心したのは、小さめに作られ、ホールド感をアップさせたというヒールカップの部分。下から柔らかな曲線を描きながら立ち上がるのだが、それが作り出すシェイプがどこかセクシーですらあったからだ。

三陽山長「友二郎(ともじろう)」03

三陽山長の靴は浅草にある工場で、熟達した職人たちによって作られている。使用する革はメーカーに直接発注して手に入れているそうだ。それに日本人の足にマッチする木型、日本の気候に合わせた製品開発なども考えあわせれば「メイド・イン・ジャパン」の長所はより浮き彫りになる。

さて、CLASS-Sシリーズには新たな製品が加わる。ウッドインナーイヤフォン3モデル(HA-FW01/02/03)と、ポータブルヘッドフォンアンプSU-AX01だ。それらをひとあし先に試聴することができた。詳しいレビューは、ここでは省略するけれど、いずれも確かな基本性能をベースにして、モデル固有のキャラクターが眩く光っていた。靴と同様、ゆるぎない「木型」があるからこそ到達できた領域ではないだろうか。では、CLASS-Sにとって「木型」とは何に相当するのか。それは言うまでもないだろう。

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