21 MACKINTOSH LONDON ゴム引きコート「DUNKELD(ダンケルド)」 2017.December
CLASS-Sな逸品
MACKINTOSH LONDON ゴム引きコート「DUNKELD(ダンケルド)」
ビジネスマンが着用するコートの規範となるのが英国だ。雨が多い土地柄で乗馬やハンティング、ゴルフといったスポーツを楽しむ英国紳士の間でコート文化が発展したのは必然だったのだろう。そして、その伝統的なスタイルは現代にも着実に根付いている。
英国の紳士服ブランドであるMACKINTOSH LONDON。その歴史は1823年にチャールズ・マッキントッシュが発明した世界初の防水布「マッキントッシュクロス」に遡る。以降、王侯貴族やビジネスマン、ミュージシャンにも愛されたその素材は、今なお“ゴム引き生地”と呼ばれ本物志向の人々に受け継がれている。
その生地を使用したMACKINTOSH LONDONを代表するコート「ダンケルド」を手に取り袖を通すと、自分の芯がピシッとし、身が引き締まる思いを抱く。独特の張りを持ち一般的なコートとは少々着心地が異なるが、それは、突然の雨風に長く耐える機能性を追求して生まれたものだと知る。
筆者も一昨年にロンドンを訪れ市内を散策したのだが、テムズ沿いを歩いた際には水上から吹く冷風に思わずコートの襟を立てたものだ。伝統的なディテールに基づくステンカラーの襟元は、寒空の下でもシティライフを送るそんな英国人のスタイルにも通じるものなのだろう。
なお、ゴム引きコートは風を通しにくい素材であるため、脇の部分には5つの通気孔が用意されている。こうした細かい部分もしっかりと作り込まれていて、何気ないのに美しい。隠れた機能美までもじっくりと堪能できるのは所有者のみに許される特権だ。「ダンケルド」の造形を引き立てているのは、こうした機能美によるものでもある。
このコートを羽織るだけでも、ロンドン市内の石造りの街並みを颯爽と歩く、凛とした英国紳士になったかのような気分を覚える。その上質さ、上品さでファッション全体を、ひいては自分自身をより高めてくれそうだ。
スタイルとディテールを身に纏い、体験する--伝統あるコートとは、その歴史を纏う存在だ。変わりゆく時代のなかでも技術と伝統を守り続けながら進化する。CLASS-Sにも、そんな気品を見出すことができよう。