CLASS-Sな逸品
レコードショップ「HMV record shop渋谷」

オーディオファンのなかにはレコード文化の全盛期を知る人も多いだろうが、今再び日本全国がアナログ・レコードの再評価に沸いている。そんなムーブメントの象徴的なショップが1990年代に“レコードの聖地”とも呼ばれた渋谷・宇田川町に2014年オープンした「HMV record shop渋谷」だ。

広々とした店内に足を踏み入れると、壁まで使ってレイアウトされたレコードの数々……。1FはロックやJ-POP、サウンドトラック、2Fはダンスミュージック、ジャズ、レゲエ、ワールドミュージックと分かれているが、僕の足は自然とロックのコーナーへと向かっていった。

思わず足を止めたのは60's、70'sロックのコーナー。定番のビートルズ『ABBEY ROAD』のUKプリント版などを眺めつつ、QUEEN、THE POLICE、JIMI HENDRIX、そしてCARPENTERSとチェックしていく。

ひと目で存在感を発揮する大判のレコードジャケットは、その時代をアイコニックに表しているようだ。もちろん、レコードで価値があるのは、そんなビッグネームだけではない。時代を生きた数々のアーティストによるすべての作品が、それぞれにオンリーワンの輝きを放っている。棚に収納されたレコードのジャケットを引き抜きチェックしていく行為は、往時の輝きまで蘇らせてくれるようだ。1927年創業のJVCは、そんなレコードの時代と共に歴史を重ねてきたブランドだったと思わずハッとさせられる。

今アナログレコードを聴く人には、往年のファンもいる一方で、まさに最近音楽に触れ始めた若者たちも多い。伝統の「WOOD」シリーズと、新たな価値を打ち出した現代的な「SOLIDEGE」シリーズという、性格の異なるラインナップを揃えるCLASS-Sは、そんなレコードファンの多様性にも近いのかもしれないなどとも思わされた。

思い出のレコードを発掘して、CLASS-Sを通してその世界にどっぷりと浸る……。そんな夜を過ごすのも、なんとも贅沢な体験だ。