GY-HM650/600 徹底解説


Chapter-3

『コーデック』

 

 JVCのProHDメモリーカードカメラレコーダーは、ノンリニア編集を前提とした“ファイルベースカメラ”として、これまでビデオフォーマットはMPEG-2 コーデックを搭載し展開してきました。GY-HM600/GY-HM650では、より多くのユーザーのワークフローに対応するよう新たにAVCHDとH.264を搭載。MPEG-2と合わせて3種類のコーデックを、マルチカメラ運用やワークフローに合わせて選べるカメラは、GY-HM600/GY-HM650だけです(2013年3月現在)。コーデックの心臓部に当たるのが、JVC独自の新世代高速度画像処理エンジン「FALCONBRID」です。

「FALCONBRID」は、JVCの民生用カメラ(Everio)から、4KメモリーカードカメラレコーダーGY-HMQ10にまで搭載されるエンジンで、ソフトウェアの制御で極めて高いパフォーマンスを引き出すことができます。GY-HMQ10では、フルHD(1920×1080)の4倍もの情報を処理し、4K(3840×2160)映像信号を処理し、4基のSDカードスロットに同時記録するということからも、その高いパフォーマンスは想像できるでしょう。GY-HM600には本チップを1基、GY-HM650にはネットワーク対応の拡張性を持たせるために2基搭載しています。イベント撮影だけでなくENGのユーザーからも圧倒的に要望の多い「バックアップ記録」や「異なるビットレート・異なるファイルフォーマットの同時記録」に対応するため、2つのコーデックを同時処理し、2基のSDカードスロットへファイル記録を可能としています(※注:同時記録不可なコーデックの組み合わせもあります。2013年3月現在)。さらに今後、ソフトウェアのアップデートをすることで機能を追加したり、改善する可能性を持たせています。  ファイルフォーマットは、コーデックされたデータのラッピング形式とも言い換えられます。GY- HM600/GY-HM650では、ワークフローに合わせて様々なファイルフォーマットを用意しています。GY-HM600ではHD記録で、MOV(MPEG-2),MP4(MPEG-2),MTS(AVCHD)が選択可能な上、SD記録のMOV(H.264)を用意しています。加えてGY-HM650ではHD記録でMXF(MPEG-2)、H.264 高画質35MbpsとProxy用の0.8Mbps MOV(H.264)を選択可能となっています。MOVはネイティブのQuickTime形式なのでラッピング変換を必要とせず、Final Cut Pro上でそのまま扱えるのが最大のメリットです。MP4はXDCAM EX互換のファイルフォーマットとしたことで、XDCAM EXを基準にしたワークフローを構築しているユーザーにはMP4が便利でしょう。MTSはAVCHDのファイルフォーマットとして民生機ビデオカメラでも馴染みのファイルで、AVCHDを基準としたワークフローに適しています。いずれのフォーマットも、撮影したファイルを後工程でどのような処理をするか、ノンリニアやサーバーでの扱い易さを考慮して、予め記録フォーマットを設定しておくとよいでしょう。

各ファイルフォーマットのSDカード内の記録フォルダを以下のとおりです。

システム 形式 記録フォルダ
HD QuickTime(MPEG2) JVC/CQAV
HD MP4(MPEG2) JVC/BPAV
HD AVCHD AVCHD
HD MXF(MPEG2) JVC/CMAV
HD QuickTime(H.264) JVC/CQAVC
SD QuickTime(H.264) JVC/CQAVC

MP4で記録したファイルをFinal Cut Proに取り込む場合は、「ProHD Log and Transfer Plug-in」(Mac版、CD-ROM同梱、ホームページでもダウンロード可)を利用して、QuickTime形式のMOVファイルに変換できるだけでなく、SDメモリーカード内のMP4ファイルをサムネイル表示も可能です。またMP4ファイルの管理ソフト「ProHD Clip Manager」(Win/Mac版、CD-ROM同梱、ホームページでもダウンロード可)を利用すれば、MP4ファイルのプレビューやサムネイル表示での確認を可能としています。MP4とMOVの両方のワークフローを抱えるユーザーには、それぞれのソフトを活用することで効率よく運用ができます。

また、GY-HM650ではHD記録のMXF(MPEG-2)をサポートしており、局やプロダクション間でのデータ互換に適しています。
さらにGY-HM650ではMOV(H.264)のモードを追加しており、高画質UHQモード(35Mbps)とProxy用のWebモード(0.8Mbps)が選択可能となっています。

記録フォーマット、設定例

 近年、ショートムービーに代表される映像作品の中には大判センサーのデジタルカメラでの動画撮影が増えており、圧縮効率に優れたH.264コーデックが多く採用されています。GY-HM650では、そういったデジタルカメラとの共存も視野に入れて高ビットレート35Mbps MOVを搭載しています。一方、ニュースやロケの映像データを速報として(ネットワークや通信で)送りたい場合、Proxyと呼ばれる“軽い”データを活用します。
このように、コーデックとファイルフォーマットおよびビットレートを、目的に応じて組み合わせ選択が可能なので、運用面でのコスト削減にも繋がります。まず、ワークフローの効率化により、ENGとニュース編集の経費を最小限に抑えることができます。また、消耗品などの経費やサーバーの拡張費を削減。さらに放送クオリティの低ビットレートHD圧縮フォーマットにも対応し、コストのかかる光ファイバー回線や衛星回線などの帯域を効率的に活用することができます。