JVC

ビジネス向け製品・サービス >>

GY-HM660 GY-HM620 SPECIAL SITE
ミドルレンジから見たその可能性(ジャーナリスト・プロカメラマン 岡 英史)

JVC初の本番用ハンドヘルドカメラシリーズ

HM650がマイナーチェンジをし、型番をHM660とし(HM600はHM620)新しくリリースされた。このHMシリーズは私としても非常に思い出が深いシリーズで、当時を振り返るとHM100やHM700という機種が一種のターニングポイントだったと考えている。GY-HM660本体イメージ
JVCと言うメーカーはプロカメラメーカーとしては意外に知られていないのだが、何処のメーカーよりもいち早く新しいフォーマットを採用しているメーカーなのである。それはアナログからデジタル、SDからHD、最近ではHDから4Kへという具合にである。これを読んで「えっ4KカメラのLS300は最近の機種では?」と思う方も居るはずだが、JVCは4年ほど前にSD×4枚でUHD収録を可能にしたHMQ10と言うハンドヘルドの機種を発売している。
更にレンズ交換式で言えばニコンレンズを搭載できるHMQ30と言う機種も…。


GY-HM660本体イメージ話を戻そう。その様なJVCカメラの中で当時のハンドヘルドは所謂ディレクターカメラと言われる小型カメラのHM150しかなく、勿論それはHM750等とのショルダーカメラと組み合わせれば非常にマッチングは良いのだが、いざカメラマンが素材や本番に使うとなると、HM150では役不足であったのも事実。当時その手のカメラはSONY NX5が完全にシェアーを占めていたのだがその中で2012年のNABSHOWで登場したHM650は正にこの現状に投入するに相応しいスペックを持っていた。


しかし、NX5のスペックは数値上よりもその使い勝手でのスペックが高く、HM650は後発でありながらも最初のファームでは「これはちょっと現場向きではない」と言う声もよく聞かれた。


しかしそこからHMシリーズの本当の意味での進化が始まった。ここまでユーザーの声を反映して機能強化・増加のファームアップを繰り返すカメラというのは他には聞いたことがなかった。聞いた話によるとJVCの技術部では「駄目出し」された項目を全員で共有し、それを全員で対処したとのこと。そして繰り返すファームアップの中でHM650は放送媒体の企業や番組にまでも使われるまでの進化を遂げた。(※海外では当初から放送局向けだったが日本ではなかなか使用されなかった)

そしてまだまだ進化できるように思われていた個体も、あともう少しハード的に性能が上がると良いなと思うのは当たり前の事。その部分はファームでもどうにもならないだろう。そんな声を知ってかHM660は、本当に機能的な部分がしっかりとレベルアップしての登場になった。

HM660で何が変わったか?

JVCの最近のカメラは型番が大きく変わらない限りそのものの形は殆ど変わらない。現状で言えばHM200シリーズ、HM600シリーズ、HM800シリーズと大きく3つに分けることが出来る。今回の型番はHM660と言う事で正直HM650との外見上の大きな違いは非常に少ない。


GY-HM650とGY-HM660の外観比較

HM660(手前)HM650(奥)LCDの文字位しか外見上の違いは見つけにくい

デュアルスロット

マルチフォーマットなデュアルスロット搭載

SDスロットカバー

唯一大きく違うのはSDスロットのカバー。
従来の180°が270°近くまで開くようになった

まず最初にHM660を渡されても前のモデルとその違いに気付く人は少ないはずだ。外見上で一番最初に目立つのは、筐体のロゴが落ちついたデザインに変わったこと位。後は筐体後部のSDスロットカバーが従来の機種より大きく開口するようになった。これは従来の位置だと、使用現場によってはカバーに物がぶつかり破損してしまう事もままある様で、完全に開けてしまうことでそのトラブルを避けると言う感じだ。その他に大きな違いは無く、GAINとWBのスイッチ形状が違うJVC独特のコダワリ(お約束?)もそのままだ。


では何が違うかと言えば一番大きく違うのは心臓部である撮像板である。従来よりも画素数が増え2.5メガピクセルとなった。勿論、感度も今までのF11から上がり、2000 lxでF12の明るさになった。


GY-HM660ボタン配置

ボタン配置等は従来機種と同じ。個人的にはGAINとWBのスイッチ保護とアサインボタンの配置の見直しを希望したいところ。

GY-HM660ボタン配置

これは非常に大きな事で、数字上では1/2inchCMOSのSONY PXW-X200と同等の明るさと同じと言うことになり、殆どのENGカメラよりも明るいと言う事になってしまった。この恩恵が今回のバージョンアップの目玉だろう。明るい分若干でも解像度が上がった様に見えるために、MF時でのピントは取りやすく感じた。HM650の時は拡大フォーカスを使って確認した様な場面でもHM660だと何となくエッジが見えそれでピントを合わすことが出来る。勿論その後のプレビューで見てもピントはしっかり来ているので間違いないはず。


それと同じくしてAFに関しても若干精度が上がった気がする。この辺は技術者の方に聞かないと真偽が解らないが、少なくとも現場に持ち出して今までAFが逃げてしまった様な場面でもしっかり追従しているのは確認が出来た。勿論MF程確実にとは言い難いのも確か。やはりダメなときはダメだがその時はMFに切り替えれば良いだけのこと、及第点は十分に上げられるだろう。


ズームに関しては意外にも手の動きに合わせた追従性が上がった様に感じられた。全機種とガチで比較した訳ではないので断定は出来ないが、所謂カメリハの様な瞬間的な動きに対しては流石に電気式なので瞬時の動きには追従しないが、そこそこ早いズームワークなら問題なく追従は可能だ。


いざ実践投入

この機種を投入できる丁度良い現場がなかなか現れず、このレポートの締め切りも近いため、先ずは毎週末に撮影しているブライダルに投入してみた。流石に「一発本番やり直し不可」の収録にいきなりデビューと言うのも危険なので、先ずはロケーション撮影だけに限定したのだが、それが中々感触も良く、プレビューでも特に破綻してる部分もないので即座に本番カメラとして使用した。


このウェディング会場は何回も撮影のお仕事を頂いているので色んな事が比較できる。勿論HM650もこの現場での収録実績が在るので比較も容易だ。この式場は格式のある教会式がウリなのだが、その分絶対的な照度は低い。HM660は感度を標準と拡張の2種類にベースを変える事が出来る。これはHM650も同じなのだが、HM650では拡張モードを使わないと厳しかったがHM660は標準モードでも何とか取れる明るさだった。この辺はF12の威力が大きい。因みにZ5Jをこの現場で使うと+9dbを入れないとダメな位の明るさだ。この辺の手軽さは、XDCAMに放送レンズを付けた位の感覚とかなり似てる感じだ。


カメラプロファイル的にはややエッジ(シャープ)をプラス方向に、ガンマはシネマを選んだ。WBも若干照明の関係で色が黄色く出るのでこの部分も補整、その状態で全行程を撮影した。フォーカスは基本的にAFを積極的に使い、エッジが掴みにくそうな場面(ウェディングケーキとウェディングドレスの被り等)はMFで行ったが、その後プレビュー確認してもピントがはずれていたり色が飛んだり(ピンスポット除く)しているところは無くそのまま編集に入れた。(今思えばAWBも実験的にアリだったかも知れない。)


また気になるバッテリーの持ち時間だが同梱されている標準バッテリーで、1時間42分の収録が可能だった。これはバックアップモードでの収録でBスロットを常に録りっぱなしにした事を考えれば十分にOKと言える範囲だ。

総評

やはりこのカメラはENG寄りのカメラであることが解る。明るいレンズと倍率のあるズームはどの現場でも間違いなく強みとなる。逆に被写界深度を積極的に使う様なシーンでは流石に最近の大判センサー系のカメラには敵わない。それが欲しいならばGY-LS300が用意されているのでそれを使うのが良い。今となっては小型軽量の部類になる筐体は撮影者の体格を選ばずに使えるはず。


GY-HM660本体イメージ音声入力もHM650譲りのリミッターが更に機能アップして搭載している為に、最初の調整だけしっかりとしておけばワンマンオペレートでも安心して収録が出来るはずだ。更にJVCお得意のマルチフォーマット搭載なので収録形態、又はワークフロー全体を考えてAVCHDからH.264/50Mbpsの高画質モードまで選ぶことが出来る。更にHM660ならA/BスロットでHDとSDの2フォーマット収録も可能、色んな形態に対応できるマルチパーパスな機能はまさにENGロケ系の現場にはピッタリのカメラだ。