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従来機ユーザーから見た進化(宏哉:ひろや)

GY-HM660 徹底インプレッション

左:従来機 HM650、右:HM660今回レビューさせていただくGY-HM660(以下、HM660)は、ハンドヘルドスタイルのHDビデオカメラである。各社とも4Kカメラの新製品登場が続くこの時勢に「なぜHDカメラか?」と正直驚いてしまったのだが、実際に使ってみると、なるほどJVCの目指すところが見て取れた。
 私自身は、従来機のGY-HM650(以下、HM650)ユーザーである。発売直後の2013年2月から導入し、テレビ番組の海外ロケや舞台撮影、ブライダル撮影などにも投入し、様々なフィールドでこのカメラを使い倒してきた。現在はHM650を2台所有している。このカメラを使うことのメリットや使いやすさを享受する反面、使い勝手の悪いところや改善点なども、身を以て体感してきた。多様な現場でHM650を使った撮影をしてきたが、今回発売された新機種HM660で、その性能がどのように向上し、使い勝手がどのように変化しているのか検証した。


基本性能 

基本的なスペックを簡単にフォローしておくと、搭載レンズは光学23倍で広角側も広く、しかしカメラは小型で軽量。三脚 に載せるだけではなく、情報バラエティー番組などで手持ちでカメラを振ることなどを考えても、このサイズ感はアドバンテージだ。収録メディアは、汎用のSDXC/SDHCカード。収録フォーマットも豊富で、QuickTime形式のMPEG2記録の他、H.264コーデックでのMP4・MXF・MOV・AVCHDが選択でき、編集環境に合わせた収録フォーマットを選択できる点は魅力的だ。カメラ機能も、多岐にわたりフォーカスアシスト機能や顔認識機能、プリセットズームによる滑らかなズームワークや6軸カラーマトリクスによる細かな画質調整機能など、書き出すだけでも大変なほどの多彩な機能が搭載されている。


進化するカメラ 

JVCプロカメラシリーズの最大の特徴は「進化するカメラ」であるという点だろう。従来機種のHM650は、発売当初には搭載されていなかった機能やモードが、その後のファームウェアアップデートで次々と進化し、発表当時と現在とでは全く違うと言っても良い程のカメラに成長した。基本性能の向上や強化はもちろん、画質・動作改善、新しい収録形式の追加、ユーザーの声を反映させた改良など、数多くの項目にバージョンアップが施されてきた。1ユーザーとして、バージョンアップの度に進化していくカメラを所有していることが、なんと魅力的であったことか。HM660は、そんなHM650のソフトウェア的な完成を見たところで、次の手となるハードウェアの刷新として登場したと見ることができる。


コンパクトなボディーながら、光学23倍ズームや、2000lux F12 を実現当然ながら、HM660では、HM650で培った進化したカメラ機能を全て盛り込んでいる。既存のHM650ユーザーが違和感なく乗り換えられるのは勿論のこと、新規ユーザーは成熟したソフトウェアの使い勝手の良さに驚くかも知れない。
 例えば、カメラ本体の12個のアサイナブルボタンには、最大24もの機能が割り当て可能(※GY-HM620は最大23の機能の割付が可能)であり、自分専用の撮影スタイルを構築できる。個人的には、液晶モニター横に備えられているジョイスティックへのアサインが便利だと感じており、ここにホワイトバランスプリセットを割り当てる事で、プリセットの呼び出しと、その値(色温度)の変更がシームレスに行えるのは、ユーザーインターフェイスとしてスマートな設計だ。また、本体下部前方の[RECボタン]。こちらもアサイナブルボタンの1つであり、デフォルトではREC機能が割り当てられているが、ホワイトバランスボタンにも変更が可能である。これは、他社のカメラではこの位置のボタンをホワイトバランスとしている物があるためで、そうした機種に使い慣れているユーザーが HM660に乗り換えても違和感やストレス無く使用できる工夫が施されている。


こうした例に見るように、HM600シリーズは他社モデルであってもそのスタイルを見習い、また一方で、ユーザーの声を丁寧に拾い上げてユーザーフレンドリーに進化し続けるビデオカメラである。この点は、製品カタログでは大きく謳われていないが、HM660の隠れた魅力の1つだと私は感じている。


GY-HM660 のハードウェア進化 

低照度撮影。感度とノイズの比較さて、HM660で進化した部分を検証していく。
 今回の新機能としての注目は、
 ・CMOSと映像エンジンの進化に伴う感度の向上
 ・液晶モニターの輝度向上
 ・ネットワーク機能の進化
 ・音声回路の改良
 が主に挙げられる。
 特に感度の向上に関しては、従来機でも F11(2000 lx)というクラス最高を誇っていたため、HM660での更なる向上には驚かされる。実際にどれほどの明るさを手に入れたのか検証してみた。


感度 

HM660では、感度がF12(2000lx)とHDハンドヘルドクラスでは最上級の明るさだ。これは、他社の1/2インチCMOSを使用したハンドヘルド機と感度で肩を並べることになる。
 HM660には、撮影感度のモードとして「標準」と「拡張」がある。「標準モード」は感度を抑えつつS/Nの良い映像となり、「拡張モード」はF12の明るい映像を得ることができる。F12となったことで、拡張モードが従来機HM650よりも明るくなったのは勿論のこと、標準モードもより明るくなっている。
 F11からF12というのは数字の上では微々たるものだが、背景の明るさや顔の輪郭の暗部との溶込み具合を見ても、この僅かな差が優位に働く現場もあるだろう。


【拡張モード時の低照度感度比較】

拡張モード時の低照度感度比較

【標準モード時の低照度比較】

標準モード時の低照度比較

S/Nに関してだが、こちらも HM650よりも良好だ。HM650もその標準モードはS/Nがよくスッキリした映像であったが、HM660は映像エンジンの刷新により、さらに画質が向上している。
 ピクチャーモニターのブルーオンリー表示を使ってノイズをチェックしてみたが、標準モードでのノイズのザワつきは小さく、ゲインアップしていってもあまり五月蠅くならない。その傾向は拡張モードにもみられ、流石に標準モードのS/Nには劣るが、それでもノイズ感は少ない。ノイズの少なさは、ディテール再現の精細さにも影響してくる。低照度という厳しい条件下でも、図形の模様やそのエッジ、肌や服の質感など、丁寧に描くことができていると言える。また、映像そのものの品位を高めることは勿論、ポスプロでカラーコレクションなどを施す際の耐性も高める。

 サンプルの画像は、Photoshopを使って青チャンネルだけを表示したもので、ピクチャーモニターのブルーオンリー表示機能を模倣した物である。チャートの平坦な部分のノイズ感や、人物のディテールや図形の模様のエッジなどに現れているノイズを比較すると、HM660のノイズの少なさがよく分かるだろう。動画で見ると、ノイズ差は更に明快で、HM660のノイズはHM650と比べて大人しい顕れ方をしている。


【拡張モード時のノイズ比較】

拡張モード時のノイズ比較

【標準モード時のノイズ比較】

標準モード時のノイズ比較


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