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従来機ユーザーから見た進化(宏哉:ひろや)

GY-HM660 徹底インプレッション

液晶モニターの輝度向上 

屋外での液晶モニターの見え方。晴天下でもしっかり視認できる従来機のHM650を使用していて気になっていたことの1 つに、屋外での液晶モニターの見づらさがあった。特に晴天下でカメラを使用する場合、液晶モニターのバックライトの輝度が弱く、外光に負けてしまって画面の中が判別し難かったのである。
 モニターフードを被せたり、低反射フィルムを貼って外光の影響を減らしたりと工夫をしたが、絶対的な輝度が足りなかった。HM660では液晶モニターの輝度を向上させ、従来機の高輝度にあたるモードを標準輝度として、さらにもう一段階明るくできる仕様となっている。実際に屋外で使ってみると効果はてきめんで、モニターフードなしでも十分に画面を視認できる状態になっていた。特に逆光気味のロケーションでは、人間の目の虹彩が絞り気味になる都合、従来なら画面内が真っ黒に見えていたのが、HM660ではしっかりと被写体を認識できたことは感動的だった。

 液晶モニターの輝度向上により、屋内屋外を問わず、たとえ晴天の撮影環境でも液晶モニターを使ってしっかりとフレーミングができることは、カメラマンにとってはストレスフリーであり、重要な改良点だと評価する。


ネットワーク機能 

JVCのプロカメラシリーズの特異とも言える特徴は、なんといってもネットワーク機能だろう。一般的には、専用のネットワーク用トランスミッターが提供するようなネットワーク機能をカムコーダに内蔵し、USB接続による通信ドングルで多彩なネットワーク機能を提供する。ネットワーク機能として大きく分けると、ストリーミング機能・ファイル転送機能・リモートコントロール機能である。HM660にもネットワーク接続機能が搭載されており、今回はLTEデータ通信を行えるUSBネットワークアダプタもお借りできたので、ネットワーク機能もテストした。

コンパクトな伝送スタイル。報道現場でもスモールパッケージを構築できるまずはライブ配信。
 HM660では、ストリーミング配信の為に多くの配信プロトコルが用意されている。トランスポートプロトコルとしては、MPEG2-TSにUDP/TCP/RTPと用意されており、他にもRTSP/RTPとRTMPが選べる。また最大の特徴としては、ビデオストリーミングソリューションであるZixiにも内蔵機能で対応している点だろう。また、近年目にすることが多くなってきたSMPTE 2022-1にも対応している。今回は、手軽に配信可能なYouTubeLiveを使ってストリーミングのテストをしてみた。事前にデータ通信用のUSBネットワークアダプタの初期設定を済ませ、ストリーミングサーバーの設定に取り掛かる。設定は簡単で、YouTubeの自分のアカウントにログインして通常の「アップロード」画面へ。「ライブストリーミング」を「始める」をクリックすれば、ユーザーに割り当てられる「サーバーUR」と固有の「ストリーム名/キー」が表示されるので、それらをHM660のストリーミングサーバー設定画面で入力する。YouTubeの配信プロトコルはRTMPとなるので、プロトコルタイプはRTMPを選択しておく。HM660側のフォーマット設定の種類によってはストリームできない組み合わせもあるので、取扱説明書でそれらのモード設定になっていないか確認すれば、あとは直ぐにでも配信可能である。

 手順が分かってしまえば簡単なのだが、例えば初めて配信する場合は、各項目の意味するものが何が何なのか分からないだろう。取扱説明書も、個別の配信プラットフォーム毎に設定が書かれているわけでは無いので、例えばYouTubeやUstreamなどのメジャーな配信プラットフォームの設定方法だけでもJVCのWEB サイトで紹介するなどして配信の敷居を下げるプロモーションなどを展開するのも効果的ではないだろうか?


【ストリーミング設定画面】

ストリーミング設定画面

【ストリーミング中の画面】

ストリーミング中の画面



次に、FTPサーバーへのクリップのアップロードを行ってみた。FTPサーバーは、今では家庭用のネットワークHDDなどでも設 定可能になっているので、個人ユーザーでも身近になっているのではないだろうか。

【FTP のアップロ-ド画面】

FTP のアップロ-ド画面

今回は、自分のWEBサイトを運用しているホスティングサーバのFTP機能を使うことにした。FTP サーバーへのアップロード設定は「クリップサーバー」から行う。「サーバーアドレス」や「ユーザー名(FTP ID)」「パスワード」を入力すれば、あとはアップロードしたいクリップを選んで伝送開始である。
 ここで便利なのは、メディアモードの「クリップをトリミング」である。この機能自体はFTPアップロード機能とは関係ないが、アップロードしたいクリップを予め必要な部分だけトリミングしておけば、伝送時間の無駄も無く、データ量も節約してアップロードできる。FTPアップロードでは、複数のクリップをまとめてアップロード可能であるので、先にまとめてトリミングしてアップロードすれば効率的だ。


カメラから直接FTPアップロードが必要なぐらい切迫した状況といえば、私は報道現場ぐらいしか思い浮かばないのだが、そのような現場で便利な機能がバックグラウンドでのアップロードだ。FTPアップロードがカメラ単体で行えるのは良いが、報道の現場はいつ目の前の状況が動き出すか分からず、その伝送処理にカメラが占有されてしまうと、アップロードをいつ行うかのタイミングを慎重に図る必要がある。しかしHM660 では、アップロードしながらの撮影・収録が可能だ。

トリミング画面アップロード中のクリップが収まったSDXCカードスロットとは別のスロットにSDXCカードが入っていれば、そちらのカードに収録を行える。アップロード中に、[ MODE 切り替えボタン ]を押してカメラモードに移行すれば、あとは普通に撮影できる。
 撮影中は、液晶画面に残りのアップロード時間なども明示されるため安心して撮影に専念できる。また、アップロードが電波の都合で中断したりしても、レジューム機能により中断された部分から追加伝送を行う事で、アップロード時間を最短にすることができる。
(レジューム機能に対応したFTPサーバーが必要)


まとめ 

今回HM660を実践的な現場へ投入ができなかったので、レビューの為のテストとなってしまったが、それでもHM660での進化は大いに感じ取ることができた。特に、液晶モニターの輝度向上は地味ながら、ロケを遂行していく上では大きなアドバンテージとなる。如何なる撮影環境でも、使い勝手が変化しないことはカメラマンにとっては重要な事だからだ。
 HM660の魅力は、“画質”と“使い勝手”をこのサイズの中で両立させている所だ。
 HDのハンドヘルド機は、他社を含めラインナップ的には終焉の時期にさしかかっている。今後、特徴的で世代交代的なHDハンドヘルド機は登場しないだろう。一方、近年のHDハンドヘルド機は、筐体の肥大化が加速したと感じている。マルチフォーマット化や多機能化、またレンズの高倍率化などで性能は向上していったが、ハンドヘルド機としてのコンパクトさは、後回しにされる傾向にあった。その中で、HM600シリーズは従来のサイズ感を維持しつつ、上記に挙げたような高機能化を実現したHDハンドヘルド機の最後の良心とも言えるラインナップだと私個人は評価している。


これからは、いよいよ4Kハンドヘルド機が市場を賑わせる時代に突入する。HM660は、そうした次代を踏まえても、HDハンドヘルド機としてやっておくべき事をやり遂げたHDハンドヘルド機の集大成であり、かつ来たるべき4Kハンドヘルドカメラの礎となるカムコーダであると言えるだろう。
 HM600シリーズで培われた機能や使い勝手を引き継ぎつつ、4Kの高画質を実現したカムコーダがJVCから登場するのが楽しみである。


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