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第1回対談 スポーツコーチングカメラシステム「開発秘話」

松尾 :
御社との出会いは、2012年に弊社の技術部門から御社のセンサーの問い合わせをさせていただいたのが最初でした。
澤田 :
そうです、弊社の運動を計測する無線センサ製品にご興味をもっていただいたのが最初でした。
松尾 :
私自身初めて澤田さんにお会いしたのは2013年11月のスポーツ工学ヒューマンダイナミクスの学会大会の会場でした。御社からカメラを開発してほしいというお話をいただき、それがきっかけでスポーツコーチング向けのカメラを共同開発することになりましたね。
澤田 :
そうですね、われわれスポーツセンシングは、主にスポーツとリハビリテーション分野の研究者の方々向けに、センサーを使って体の動きを直接計測する製品を作ってきましたが、どういう動きをしているのかというのを確認するために、ビデオを併用していました。そんな中で研究分野でもビデオに対するニーズというのは少なからずあり、現場の方々からのビデオに関するニーズ、もっとこういうものがあればいいなという声を具現化したいという想いを伝えさせていただいたのが最初ですね。
松尾 :
ちなみに、御社でスポーツの事業というのをやり始めたのはいつ頃ですか。
澤田 :
スポーツセンシングという会社は、2015年9月の設立になりますが、それ以前はロジカルプロダクトという会社の中で2009年に自社製品事業を新規事業としてスタートしました。当時はまだ受託開発の一環で、国立スポーツ科学センターさんからお仕事いただいて、スポーツ分野に特化した試作や、特注品を作るというのが最初でした。その中で研究分野の機器というのが意外と少なくて、海外からの高い製品を買って使うというケース多く、国産かつ安価で広く研究者が使えるようなものが実はあんまりなくて、そこに割って入っていきたいと考え、事業をスタートました。

「明るく撮れる事。それがコーチングカメラには重要。」

松尾 :
われわれJVCケンウッドは長らく業務用と、民生用のビデオカメラを製造、販売してきましたが、全く新しい領域、お客様の様々なニーズにきめ細かく応えられるビデオカメラの提案を展開していきたいという想いがあり、そんな中で両社が出会って一緒にスポーツコーチングに特化したカメラの開発を進める流れができたと思っています。ところで、御社がJVCケンウッドをパートナーにしたいと考えたポイントはどこにありましたか?
澤田 :
もともとJVCケンウッドさんがスポーツというキーワードを盛り込んで、アメリカで発売したGC-P100の話は知っていて、その後WIFI搭載モデルを1台買って使った というのが最初ですね。古くから高速動画撮影対応のいろんなデジカメやビデオカメラはありましたけれども、収録画像が暗いものが多くて、現場で使おうとすると結構難しかったんですよね。そんな中、JVCのカメラはとても明るかったので非常にいいなと。60Pでの映像もきれいだったので、かなり活用させて頂きました。松尾さんとお話しするよりも前にJVCケンウッドさんのカメラを使かわせてもらって、一番いいなと思ったのは明るさのところだったんです。そんな中でJVCケンウッドさんに会えることになったのは、何かの縁かなと思ってお会いした時にいろいろ話をさせていただきました。


松尾 :
新たにカメラを共同開発したいとお聞きしたとき、御社の無線システムとの連携というお話を伺いましたね。
澤田 :
当時お客様からビデオ撮影に関するいろんな不満をお聞きしていました。スポーツでビデオを撮影しようとすると、カメラを固定することが多いんですが、当然ながら録画開始を押しにカメラまで行かないといけない。野球のピッチングとかバッティングでカメラと被写体が近いところだったら簡単に押せるからいいんですが、スキーのジャンプとか陸上のスタートとゴールみたいに被写体とカメラが離れていたり、被写体が大きく移動するような場面だったら、スタート押すのに、それだけで人が必要になりますよね。そうすると、ビデオ撮るためだけに人を雇わなきゃいけない。映像撮ることにコストがかかることが多くて、それは一つ問題だったんですね。

映像は撮りたいけど、機材以外のところでいろんなコストがかかるのは負担が大きい。それだったら無線使って同時に一気に撮れないかというのは昔から思っていました。また、実際に動画を使って研究や、動作分析しようとする人たちは、色んな角度からの映像が見たいので、1シーン撮るにもカメラを何台か置きたいというニーズはありました。それを実現しようと思ったら、ケーブルいっぱいはわせて、無理やりつないで同時に押すっていうパターンしか当時はなかったので、無線技術を使ったら一気に解消できるんじゃないかと思っていました。なおかつ、ハイスピードの映像にも無線で制御できたりすると、研究分野でも十分使い勝手があると感じていまして、JVCさんのカメラはその辺の拡張性もあると伺えたので、是非一緒にやりたいと思いました。

「経験があったからこそタギングにこだわった。」

松尾 :
もともと澤田さんも競技の指導をされていたと聞いていますが、当時から映像の必要性を感じていたわけですか?
澤田 :
もともと私がU-12世代のサッカーチームを十数年間教えてきたといういきさつがあり、指導者として言葉で伝えていながらも、彼ら自身の映像を見ながらアドバイス出来たほうが理解が早いだろう、どうにか映像をコーチングで活用したい、と思っていました。

センサーでいろいろ測って、それなりにいろんな特徴も判る。可視化もできる。でも、やっぱりそれだけじゃ伝わり方が足りないのではないか?スポーツの指導とか、コーチング、動作分析っていうことを考えた場合、動画をもっと活用するというのが理想的なソリューションだというのは、それこそ指導者始めた20年前からの積年の思いがありました。サッカーの試合では、前半の試合のプレイをハーフタイムで修正するのですが、そこで映像を使って指導するために最も必要な機能と考えていたのは「タギング」ですね。その指導するポイント、「この場面のこの動きはもっと伸ばそう」とか、「ここはもっとこう修正しよう」っていうところを撮影しながら、リアルタイムにタギングして、必要なとこだけハーフタイムに見せることを一番に実現したいと考えていました。

松尾 :
そのタギング機能を実装したスポーツコーチングカムを発売後、どういったところに提案して実際に使っていただいているか、お聞かせ下さい。
澤田 :
弊社のお客様には、研究者、特にスポーツの研究者の方々が多いんですけれども、あとはソフトバンクホークスさんのようなプロスポーツチームと、あとリハビリテーションのお客様で大体9割くらいを占めます。スポーツの研究者の方はもう本当に幅広くて、それこそ陸上競技、水泳競技、スキーとかの雪上競技から格闘技までかなり幅広く使っていただいていますね。特にどの分野、どの競技にものが多いということはなくて、オリンピックにある競技だったら3分の2くらいは使っていただいていると思います。
松尾 :
お客様の評価はいかがですか。
澤田 :
例えばタギングという機能。以前だったら、映像撮った後に必要なシーンを切り出すには、もう一回見ながら切り出してっていう作業を1日とか1日半かけてされたのが、場合によっては1時間くらいに、数十分の1に短縮できたというような事例も頂いていますし、ハイスピード撮影やシャッタースピードを上げても屋内の競技の方にもとにかく明るく、以前とは 試合なり練習なりを撮影している映像の明るさが全然違うので、より細かいところまで見えるようになったと。その他、同梱バッテリーだとサッカーとかだったら1試合もたなかったりしますけれども、外部長時間バッテリーを使えるようにしたことで、格闘技だと8時間回しっぱなしっていうこともありますし、野球でも長い試合だったら3時間、4時間になりますよね。電源を確保できない環境でも安心して使えるようになったところも皆さんに評価していただいていますね。
松尾 :
我々が狙っていたところは、確実に評価して頂いているということですね。最後に、これからの展望をお聞かせいただけますか。
澤田 :
このカメラのポテンシャルで1番高いところはタギングの機能なので、撮った映像をいかに活用して、選手の競技力向上や、研究に使ってもらえるかっていうところにります。タギングすることで、映像を活用するための効率を劇的に改善することができるし、その空いた時間で、もっといろんなことが考えられたり、時間を作ることができます。その効率が上がったところでより密度の高い指導ができたり、密度の高い研究ができるっていう流れを作りたいと思っています。スポーツ以外のところだったら、教育の現場であったり、工場だったり、例えば生産工程の「改善」にも使えると思います。映像を活用するための常識として幅広く根付かせたいと思っています。
松尾 :
今後はスポーツの業界以外にもどんどん展開をしていきたいということですね。
澤田 :
そうですね、展開していけると思っています。
松尾 :
われわれも一緒に広げていきたいと思います。