ビデオ時代の草創期を築いた先輩達は想像していたのだろうか、今年のTVFを。
多くのジャンルで心に残る作品が多かった。
まさに個人ジャーナリズムは、完全に開花したと言えるのではないか。身の回りに起こる様々なテーマの本質を個人の目で推理・洞察・組み立てする、そうしたリテラシーが市民のものになったと言っても過言ではない。
『共に行く道』は現在深刻化する「老老介護」をコミカルに、しかしそこにある「危機」を丁寧に見せてくれる。旦那さまの病状を気遣う奥さまの「本音」とこれからのことをさりげない言葉で綴るナレーションは傑作であった。
『メラニー‐自分の道を行く』は盲目の少女の健気という言葉では足りない清々しさと周囲の障害者との『成熟した社会の距離感』を見せてくれた。
『タガメ−飼育と観察を通して』は中学生の丁寧な作品作りはタガメ生態を多くの人に伝える事のみならず、ビデオの可能性を改めて伝えてくれるものだった。
千本を越える作品を送ってくれた中国の人々に対する感謝を伝えたい。作品の中に見ることの出来る現代中国の世相、生活、気持ちが伝わってくる優れた作品が多かった。
『虹橋横丁のオリンピック』は惜しくも優秀作品賞入賞は果たせなかったが、オリンピック開催を迎えた中国の庶民の心を映し出す好感の持てる作品。『赤い紙船』は出稼ぎに行った両親を待つ子供達を描いた。どちらも日本或いは世界の原風景とも言える作品。心に残った。
病気と戦う人を描いた『自毛デビュー』『とことん元気で』には勇気と元気をもらうことができた。
珠玉の作品群、31回目を数えて累計五万二千本を越えた。
今年は20才代以下の作品が7割を超え増々そのバラエティを増してきた。「個人から発信するジャーナリズム」が今まで以上に加速する。そんな予感を持って審査を終えることができた。
改めて、TVFを支えて来てくれた応募者の皆さんとビデオ業界関係者の皆様に感謝したい。
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