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音楽の旅

VOL
08
   イーグルス「ロング・ラン」 2017.November

イーグルス「ロング・ラン」
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どのバンド/グループにも、定番的一枚は存在する。米ウェストコーストを代表するイーグルスについては、1976年発表の「ホテル・カリフォルニア」をおいて他にない。収録曲の歌詞に刷り込まれた退廃感や問題定義、何本ものギターを重ねた重厚なアレンジによって、「ホテル・カリフォルニア」はあの時代のロックの金字塔となった。

しかし、あくまで個人的見解だが、私はその3年後にリリースされた「ロング・ラン」の方が断然好きだ。ピークに達しつつあったメンバー間の軋轢、大ヒットアルバムを生み出した後のプレッシャー、ソングライティングへの苦悩など、ツアーを敢行すればどこも超満員という人気絶頂とは裏腹の状況にあり、事態はどんどん負のスパイラルに陥っていき、1982年にバンドは正式に解散を表明した。

私は当時のバンドのそうした重苦しさ、影の部分が見え隠れするようで、「ロング・ラン」がとても愛おしく思える。特にスローテンポの「言い出せなくて(原題:I Can't Tell You Why)」と、アルバムラストの「サッド・カフェ」の黄昏た雰囲気は、じっくり耳を傾けたい楽曲だ。

イーグルス「ロング・ラン」

パーソナルな思い入れがある、イーグルスのこの実質的なラストアルバムを聴くために私が今回選んだCLASS-Sのヘッドホンは、「WOOD 01(HA-SW01)」に、別売のバランス対応ヘッドホンケーブル「CN-HY01MB」を接続し、さらに ヘッドホンアンプ「SU-AX01」を組み合わせるという、やや大がかりなもの。192kHz/24ビットPCMというハイレゾ上位フォーマットでエンコードされた「ロング・ラン」の楽曲の心髄を余すところなく引き出そうという狙いだ。

イーグルス「ロング・ラン」

ウッドドーム振動板を採用した「WOOD 01」は、1テスラを越える磁束密度を実現した磁気回路で強力に駆動される。そのエネルギーの伝達経路として、空間表現と解像力に長けた「CN-HY01MB」を加え、さらに源流にはフルバランス構成アナログアンプとハイスピード電流帰還ディスクリートアンプを内蔵した「SU-AX01」 を当てることで、楽曲の情報量を万全に受けとめようという思いなのだ。

「言い出せなくて」は、どっしりとしたベースラインにセンチメンタルな歌唱が乗る。歌うのはティモシー・B・シュミットで、本作発売前に行なわれたツアー途中で脱退したランディ・マイズナーに代わって新加入した、元POCOのベーシスト。

個人的には、イーグルスのマイフェイバリットベスト3に入れたい曲で、グレン・フライによる間奏部のギターソロの切なさったらない。ドン・ヘンリーのドラムがゆっくりとビートを刻み、ベースラインのピッチも克明。シンセサイザーの広がりやギターの切れ味のよさは、バランス接続と「SU-AX01」の威力だろ う。ここで「SU-AX01」の付帯機能「K2テクノロジー」をオンすると、高域の抜けがいくぶんよくなり、ギターのハーモニクスが映える印象だ。

アルバム最後のナンバー「サッド・カフェ」も名曲だ(やはりドン・ヘンリーの歌を紹介しないと、イーグルスを聴く意味がない)。1977年に急逝したバンドのロードマネージャーに捧げられたとあるが、歌詞はかつてたむろした酒場に昔の仲間が参集し、今の状況を嘆き、往時を懐かしむ心情を描いている。ギターの多重録音のハーモニー、少し擦れたドンの声に円熟の味わいを感じる。それを「HA-SW01」が見事に引き出しているのだ。

まるで彼らの行く末を暗示しているかのような楽曲のエピローグは、“泣き節"の元祖デヴィッド・サンボーンのアルトサックス・ソロだ。揺れ動くメンバーの心情がよく現されていると思うのは、私だけだろうか。

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